結論から言うと、PTS夜間取引は決算やニュースの後に日本株を売買できる便利な仕組みですが、「夜でも東証と同じ感覚で取引できる場所」ではありません。取引時間、使える注文、板の厚さ、受渡日が証券会社や時間帯によって異なります。特に、最後に約定した価格だけを見て飛びつかず、売り気配と買い気配、その数量まで確認することが重要です。
PTSは取引所を経由しない私設取引システム
PTSは「Proprietary Trading System」の略で、日本証券業協会は、証券会社が運営するコンピューター・システムを使って取引所のように売買できる仕組みと説明しています。東証とは別の市場なので、同じ銘柄でも東証とPTSで気配や約定価格が異なることがあります。
PTSには日中取引もありますが、個人投資家にとって分かりやすい特徴は夜間取引です。東証の取引終了後に発表された決算、業績修正、増配、自社株買いなどを受け、その日の夜に売買できます。ただし、ニュースへの反応を早く実行できることと、有利な価格で約定できることは同じではありません。
取引時間は「PTS運営会社」と「証券会社」で違う
2026年10月13日時点で、楽天証券の夜間PTS取引は17時から23時59分までです。ジャパンネクストPTS自体の夜間セッションは翌朝6時まで運営されていますが、楽天証券で注文できるのは23時59分までで、未約定注文は終了時に取り消されます。
SBI証券も、提供するデイタイム・セッションは営業日の8時20分から16時30分、ナイトタイム・セッションは17時から23時59分です。PTS側が動いていても、自分の証券会社から発注できるとは限りません。「市場が開いている時間」と「口座から注文できる時間」を分けて確認しましょう。メンテナンスや臨時停止もあるため、実際の注文前には証券会社の当日案内を確認してください。
夜間PTSは指値と板確認が基本
楽天証券のPTS直接注文は指値のみで、成行や逆指値には対応していません。SBI証券のPTS注文も指値のみで、成行、逆指値、OCOなどは利用できません。これは、値段を指定せずに買うのではなく、「この価格までなら買う」「この価格以上なら売る」と上限・下限を決めて注文するということです。
夜間は日中より参加者や注文数量が少なく、最良買い気配と最良売り気配の差が広がることがあります。ジャパンネクストPTSには、取引所のように一定の価格差を超える注文を特別気配として一定時間表示する気配更新制度がありません。そのため、板が薄い銘柄では少量の約定でも現在値が大きく動いて見える場合があります。
具体例:現在値だけで判断すると高値づかみになる
仮に東証の終値が1,000円の銘柄に好材料が出て、夜間PTSの最終約定値が1,150円になったとします。しかし板を見ると、買い気配1,080円が100株、売り気配1,150円が100株で、その上の売り注文が1,220円だったとします。
この状況で「15%上昇しているから強い」と現在値だけを見ると、実際には売買希望価格の差が70円あり、1,150円で買える数量も少ないことを見落とします。翌朝の東証が1,150円以上で始まる保証もありません。夜間の反応が過大で、翌朝に1,050円で始まる可能性もあります。これは予想ではなく、流動性が低い市場では価格の代表性が弱くなることを示す仮例です。
受渡日は日中取引より後ろになることがある
夜間PTSは資金管理にも注意が必要です。楽天証券では、日中取引の受渡日は約定日から起算して3営業日目、夜間取引は4営業日目です。SBI証券の説明でも、日中PTSは約定日から2営業日後、夜間PTSは3営業日後に決済されます。数え方の表現は異なりますが、夜間取引の受渡しが日中より1営業日後ろになる点は同じです。
夜間に買った銘柄を翌営業日に東証で売るなど、夜間と翌日の日中をまたぐ売買では、同じ資金を繰り返し使うと差金決済に該当して注文できない場合があります。買付余力と受渡予定を注文前に確認してください。
発注前の5項目チェック
- 取引時間:自分の証券会社が現在注文を受け付けているか。
- 市場指定:東証、PTS、SORのどこへ発注する設定になっているか。
- 板の厚さ:最良気配だけでなく、その上下の価格と数量も確認したか。
- 指値:材料への期待ではなく、許容できる価格を具体的に決めたか。
- 資金と受渡し:翌日の売買を含め、買付余力や差金決済の制約に触れないか。
注意点
PTSはすべての銘柄を常に取引できるわけではなく、取扱銘柄、注文種類、手数料、信用取引の可否は証券会社やセッションで異なります。主市場やPTSで売買停止になれば、発注済みの未約定注文が失効することもあります。サービス仕様は変更される可能性があるため、証券会社の最新ルールを優先してください。
まとめ
PTS夜間取引を使うときは、早く売買できることよりも、価格の妥当性を確かめることが先です。現在値だけでなく板とスプレッドを見て、指値で許容価格を限定し、受渡日と翌日の資金計画まで確認しましょう。「材料が出たからすぐ注文」ではなく、「薄い板でもこの価格で売買する理由があるか」を一度問い直すことが、夜間取引の事故を減らします。
参考資料
- 日本証券業協会「PTS」
https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/words/0237.html - 楽天証券「夜間取引/PTS取引の取引時間」
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/pts/rule/session.html - 楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/pts/rule/ground_rules.html - SBI証券「PTS(SBI PTS)の取引時間を教えてください」
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ee83d94144d40001145dac4/ - SBI証券「PTS(SBI PTS)の注文方法は?」
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5edf2807878c430011c179e0/ - ジャパンネクスト証券「サポート」
https://www.japannext.co.jp/ja/support
本記事は投資判断の参考となる一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や取引を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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